雑記帳

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「響け!ユーフォニアム」という作品と向き合いたい

のんのんびより ばけーしょん」の感想を書いていたのですが、余りにもオタクオタクした記事になっていてキツい感じになってしまって公開したくなくなったので、代わりに武田綾乃さんの小説、「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ!」を読んだ感想でも書きます。

この作品は、アニメ「響け!ユーフォニアム」の原作小説という位置づけのものです。ちなみにアニメは冒頭しか見てないです。理由は後で話します。

なぜこの本を手に取ったのか

武田綾乃さんの小説は、「青い春を数えて」「その日、朱音は空を飛んだ」を読んだのが最初で、その後に「響け!ユーフォニアム」の原作小説を書いている人だという事を知りました。同アニメの存在は前から知っており、友人に強く視聴を勧められたこともあり、一話の冒頭だけ見たことがあったのですが、「再現度の高い、下手な吹奏楽部の演奏」の音に圧倒され、同時に過去の渋い記憶を呼び喚こされたので正気を保つのが難しくなったため視聴を断念しました。

響け!ユーフォニアム」というコンテンツと接していると、吹奏楽部に所属していた頃の青臭い思い出とかその時感じていた気持ちがフラッシュバックしてくる想いになりました。作品のクオリティーが高いのは百も承知だった。いや、高すぎるからこそ僕はこのコンテンツから意図的に遠ざかったんだと思います。

2019年7月、六地蔵京都アニメーション第一スタジオが放火され、多数の尊い命が犠牲になるという痛ましい事件が起こりました。日本の宝とも言えるクリエイター達の命が一瞬にして奪われたこの事件に胸を痛めた僕は、再び京都アニメーションが生み出したコンテンツに触れ、その素晴らしさを改めて実感する必要があると思ったのです。

私は、京都アニメーションのTVアニメ作品は9割方視聴していたのですが、唯一、「響け!ユーフォニアム」というコンテンツは向き合うことが出来ていませんでした。丁度良い機会だと感じた私は、再びこの作品と向き合おう思ったのです。

いきなりアニメを視聴するのは精神的な負担が大きいので、まずは原作小説から楽しもうと思い立ち、武田綾乃さんの小説だったこともあり手に取るに至ったのです。

感想

一巻しか読んではいないものの、武田綾乃さんの描く思春期の少女達の姿の耽美さは他の作品と比べても遜色ない形で発揮されており、また、吹奏楽部という学内においては微妙な立ち位置にあるこの部活を、生々しいくらいのリアリティーを持って描き切っています。吹奏楽を経験したことがある方なら共感できるシーンが多くあります。ただ、武田綾乃さんの描くまるで血が通ってるかのような思春期の少年少女と、吹奏楽部における人間ドラマが掛け合わさったこの作品は、やはり凄まじい暴力にもなり得るのです。私はページを捲る手が度々止まりました。それでも最後まで読み切った後は雲の切れ間から覗く光線のような、そんな少し清々しい気持ちになりました。武田綾乃さんは吹奏楽部に所属していた経験があるらしく、この部活の光の部分や影の部分が生き生きと描かれている点にも納得がいきます。

総括

本コンテンツを映像という媒体から楽しむための足掛かりとして小説を読み始めたのですが、小説単体としての完成度は非常に高く、多くの人に勧める価値のある素晴らしい作品だと感じました。文章という媒体から感じられたこの「響け!ユーフォニアム」という作品の素晴らしさを、映像という形で楽しみたいという気持ちが芽生えたのは間違いありません。作品の中で確かに生きている少女たちのあふれんばかりの青春の情熱が、アニメを通してこの作品と向き合う勇気を与えてくれているように感じざるを得ません。